家の解体と補助金

長屋・連棟住宅の切り離し解体 隣家との合意と外壁の補修、区分所有法と建築基準法の確認点

内容の確認日: 2026年11月4日

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長屋(連棟住宅)の1戸だけを解体するときは、隣の住戸の持ち主との話し合いが先です。建物がつながっているため、切り離し工事は隣の家の壁や屋根に直接かかわります。

区分所有法が当てはまる長屋では、条文上、共用部分の変更に決議や承諾が必要になる場合があります。切り離したあとの外壁の補修と、建築基準法上の扱いは、工事の前に市区町村の建築指導の窓口で確かめます。この記事は一般的な情報で、個別の判断は建築士や弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

長屋の切り離しは何が問題になるのか

通り沿いに建つ古い木造の長屋
写真: Suikotei / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

長屋は、1つの建物の中に複数の住戸が横に並び、各住戸が別々の玄関を持つ形の住宅です。屋根や壁、基礎がつながっていることが多く、1戸分だけを取り除くと、残る住戸の側面が外にむき出しになります。

この記事で確かめた範囲では、長屋の切り離しの手順を全国共通で決めた国の資料は見つかりませんでした。扱いは建物の登記や構造、自治体の運用で変わります。確かめられた内容は、法令の条文と、神戸市と大阪市の公式ページの記述です。

切り離しで問題になる点は、大きく3つです。

  • 隣の住戸の持ち主の同意や承諾を得られるか。
  • 切り離したあとの外壁を、誰がどう仕上げるか。
  • 建築基準法などの面で、行政に届け出や相談が必要か。

家を解体する全般の流れは、見積書と届け出の記事に書いています。この記事は、長屋に特有の点に絞ります。

隣家との合意と区分所有法

江戸東京博物館に再現された大正期の長屋
写真: Daderot / CC0(Wikimedia Commons)

区分所有法の1条は、1棟の建物に構造上区分された数個の部分があり、それぞれ独立して住居や店舗などに使えるときは、各部分を所有権の目的にできると定めています。マンションだけでなく、長屋も条文上は当てはまる余地があります。

当てはまるかどうかは、建物の構造と登記の形で変わります。各戸が別々の建物として登記されているのか、区分建物として登記されているのかは、法務局で登記事項証明書を取って確かめます。ここは個別の判断が必要で、司法書士や弁護士に聞くのが確実です。

区分所有法が適用される場合、条文は次のようになっています。

  • 共用部分とは、専有部分以外の建物の部分などを指す(2条4項)。
  • 共用部分の変更は、形状や効用の著しい変更を伴わないものを除き、集会で区分所有者と議決権の各4分の3以上の多数による決議で決める(17条1項)。規約で、この割合を2分の1を超える範囲で下げることもできる。
  • 共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、その専有部分の所有者の承諾が要る(17条2項)。

隣の住戸と共有している壁や柱が共用部分にあたるかは、規約や構造で決まります。切り離しが「変更」にあたるのか、「特別の影響」があるのかも、個別の事情で変わります。条文を当てはめる作業は、専門家に任せる部分です。

区分所有法が当てはまらない長屋でも、隣の家に影響が出る工事であることは変わりません。民法209条は、境界やその付近の建物の築造、収去、修繕のために、必要な範囲で隣地を使えるとしています。ただし住家には、居住者の承諾がなければ立ち入れません。使う日時や方法は隣に通知し、隣が損害を受けたときは償金を請求できます。足場を隣の敷地側に組む場合などは、この条文も関わります。

神戸市の密集市街地建物除却事業の取り扱い(令和8年2月1日)に、住戸ごとの解体についての記述があります。長屋は住戸ごとの解体除却も補助の対象とする、ただしトラブルがあった場合は申請者が対処する旨の誓約書を出す場合に限る、とあります。話し合いが済んでいることは、補助を使う場合でも前提になります。

切り離したあとの外壁と補修

木々の下に建つ2階建ての古い長屋
写真: Suikotei / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

1戸を取り除くと、隣の住戸の側面は、これまで内側だった面が外に出ます。補修の範囲と費用は、トラブルの種になりやすい部分です。

神戸市の同じ資料は、補助の対象経費について次のように書いています。長屋の一部を解体除却するときに必要な、隣接する外壁の補修費は、その他市長が必要と認める費用とする。つまり、この制度では、隣の外壁の補修費が補助の経費に入りうるということです。対象になるかは、資料の表で費目ごとに判定されます。

大阪市の狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度のページ(2026年4月1日更新)には、重点対策地区の一部のエリアについて、長屋等の一部解体の限度額が1棟100万円と書かれています。補助の対象や金額は、地区と年度で変わります。どの市の補助でも、先に申請して交付の決定を受けるのが基本です。順番は解体の補助金の記事で説明しています。

補修の話し合いで、事前に決めておきたい点は次のとおりです。

  • 補修する範囲(外壁の仕上げ、屋根との取り合い、雨仕舞いの部分など)。
  • 費用を誰が負担するか。
  • 工事の前の状態の記録(写真など)をどう残すか。
  • 補修の後に不具合が出たときの連絡先。

取り決めは書面にします。口約束だと、あとで補修の範囲を巡って食い違いが出ます。

建築基準法で確かめること

通りに面した古い木造住宅
写真: NevinThompson / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

建築基準法の面で、切り離しにどんな手続きが要るかは、この調査では全国共通の基準を確かめられませんでした。条文から言える点と、窓口に聞く点を分けて書きます。

条文から確かめた点は次のとおりです。

  • 建築物を除却するときの届出: 15条1項は、除却の工事を施工する人が、除却しようとする建築物の届出を都道府県知事にすることを定めています。ただし、工事に係る部分の床面積の合計が10平方メートル以内なら不要です。条文の基準は、建築物または工事に係る部分の床面積です。
  • 長屋の界壁: 30条は、長屋の各戸の界壁について、隣の住戸の生活音を減らす構造にすることと、小屋裏または天井裏に達することを求めています。天井が一定の遮音基準に適合する場合は、後者は適用されません(30条2項)。
  • 延焼のおそれのある部分: 2条6号は、隣地境界線から1階は3メートル以下、2階以上は5メートル以下の距離にある建築物の部分を、延焼のおそれのある部分と定めています。切り離しで出てくる新しい外壁は、隣地との距離が近くなります。
  • 既存の建物の扱い: 3条2項と3項は、規定の施行時にすでにある建築物は、規定に適合しなくても原則適用を除外する一方、増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替などの工事をするときは、規定を当てはめる場合を定めています。

切り離し工事が、増築や改築、大規模の修繕にあたるのか、建築確認が要るのか、残る建物の外壁にどんな防火上の仕様が求められるのかは、条文だけでは決められません。建物の地域、構造、規模で変わるためです。市区町村や特定行政庁の建築指導の窓口に、建物の所在地、登記の内容、切り離しの範囲を伝えて確かめます。

窓口に持っていくと話が早い資料は、登記事項証明書、建築当時の図面や確認済証、現況の写真です。持っていない場合は、窓口で相談の方法を聞きます。

進める順番

古い木造住宅が並ぶ細い通り
写真: NevinThompson / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

ここまでの内容を、順番に並べます。

  1. 登記事項証明書で、建物の登記の形と所有者を確かめる。
  2. 隣の住戸の持ち主に、解体の希望と切り離しの方法を伝える。連絡先が分からないときは、登記の名義から探す。
  3. 建築士や解体業者に、切り離しと外壁補修の方法と費用の見積りを依頼する。
  4. 市区町村の建築指導の窓口と、補助金の窓口に確かめる。
  5. 隣の住戸の持ち主と、補修の範囲、費用の負担、工事中の立入り、連絡方法を書面で取り決める。
  6. 補助金を使う場合は、交付決定を受けてから契約する。
  7. 工事の前に、隣の家の状態を写真などで記録する。

長屋の切り離しは、普通の戸建ての解体より調整が多い工事です。見積りを取るときは、切り離しの実績があるかを業者に聞きます。業者の許可と登録の確かめ方は、解体業者の選び方にまとめました。

解体のあとの土地の税金は、固定資産税の記事で説明しています。登記された建物を壊したら、滅失登記が必要です。手続きは建物滅失登記の記事にあります。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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