家の解体と補助金

特定空家の行政代執行と解体費用の請求 空家法22条の命令から費用の徴収まで

内容の確認日: 2026年11月4日

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特定空家等と判断された空き家は、空家法の22条にもとづく勧告と命令を経て、市町村長が行政代執行で解体できます。代執行にかかった費用は、解体された空き家の所有者に請求されます。

請求されるのは、代執行が終わってから、実際にかかった額です。納めなければ、国税滞納処分の例で強制的に徴収されます。所有者が見つからないときは略式代執行という別の道があり、あとから所有者が分かれば費用を請求できます。この記事は一般的な情報で、個別の判断は市区町村の空き家担当窓口や弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

助言・指導から命令までの順番

鎌倉の山あいに残る空き家
写真: Syced / CC0(Wikimedia Commons)

空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)の2条2項は、特定空家等を次のように定めています。そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われず著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全のために放置が不適切な状態にある空家等です。

特定空家等への措置は、22条が順番を決めています。

  1. 助言または指導(1項): 市町村長が、除却、修繕、立木竹の伐採などの措置をとるよう求める。
  2. 勧告(2項): 助言や指導で改善されないとき、相当の猶予期限を付けて措置をとるよう勧告する。
  3. 命令(3項): 勧告を受けた人が正当な理由なく措置をとらず、特に必要があるとき、猶予期限を付けて命じる。
  4. 代執行(9項): 命じられた人が履行しない、履行しても十分でない、期限までに完了する見込みがないとき、市町村長が自ら行うか第三者に行わせる。

建物の解体まで求められるのは、倒壊や衛生上の危険がある場合に限られます。1項のかっこ書きは、そうした状態にない特定空家等については、建築物の除却を除くとしています。景観だけが理由なら、解体ではなく修繕などが求められる形です。

勧告を受けると、その空き家の敷地は固定資産税の住宅用地の特例から外れます。この点は固定資産税の記事で説明しています。

命令の前には、意見を述べる機会が用意されています。22条4項から8項と、国土交通省のガイドラインによる流れは次のとおりです。

  • 市町村長は、命じようとする措置とその事由、意見書の提出先と提出期限を書いた通知書を交付する。
  • 通知書を受けた人は、意見書と自分に有利な証拠を出せる。
  • 通知書を受けた日から5日以内に、意見書に代えて公開の意見聴取を請求できる。
  • 意見聴取が開かれるときは、期日の3日前までに通知と公告が行われる。証人を出席させることもできる。

請求がなく期間が過ぎれば、意見書の提出期限の経過をもって、命令を出せるとガイドラインは説明しています。通知書が届いたら、期限の日付を最初に確かめます。

命令は書面で行われ、不服がある場合は市町村長への審査請求ができます。ガイドラインは、命令の書面に不服申立てができる旨と期間、取消訴訟の出訴期間も示すこととしています。命令に違反した人には、30条1項で50万円以下の過料が定められています。命令の後には標識の設置による公示もあり(22条13項)、所有者はその標識の設置を拒んだり妨げたりできません(14項)。

代執行が行われるまでの手順

草に覆われた空き家
写真: Kuroshio no Neko / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

22条9項は、代執行の手続を行政代執行法の定めに従うとしています。行政代執行法3条とガイドラインによる流れは、次のとおりです。

  1. 戒告: 相当の履行期限を定め、期限までに履行しなければ代執行をする旨を、あらかじめ文書で伝える。
  2. 代執行令書: 戒告の期限までに履行がなければ、代執行をする時期、派遣する執行責任者の氏名、費用の概算による見積額を文書で通知する。
  3. 代執行: 市町村長が自ら、または第三者に行わせて、解体などを行う。

ガイドラインは、戒告の期限までに履行がなかったとき、すぐに代執行令書に進まず、再度の戒告で自分で履行する機会を与えることも認められると説明しています。

代執行でできるのは、他人が代わって行える措置に限られます。ガイドラインは、特定空家等による周辺への悪影響をなくすために必要かつ合理的な範囲に収めることも求めています。

家の中に価値のある動産があるときの扱いも、ガイドラインにあります。社会通念上処分をためらう動産は保管し、期間を定めて所有者に引き取りに来るよう連絡することが考えられるとされています。現金や有価証券は供託所に供託する方法もあります。

災害など非常の場合は、手順が短くなります。22条11項は、特定空家等が保安上著しく危険な状態にあり、命令の手続を取る暇がないときは、命令などを経ずに市町村長が措置を行えるとしています。いわゆる緊急代執行です。ガイドラインは、災害時だけでなく、通学路などに倒壊するおそれがある場合も想定しています。ただし、勧告を受けた人に正当な理由があって措置をとれなかった場合など、命令自体ができないときは使えません。所有者が確知できないときは、緊急代執行ではなく略式代執行を行うとされています。

代執行の費用は所有者に請求される

木造住宅を取り壊す小型の重機
写真: melvil / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

行政代執行法2条は、代執行にかかった費用を義務者から徴収できると定めています。義務者とは、命令を受けた所有者などのことです。

費用の請求は、同法5条と6条に沿って行われます。

  • 市町村長は、実際に要した費用の額と納期日を定めて、文書で納付を命じる(5条)。
  • 費用は国税滞納処分の例で徴収できる(6条1項)。
  • 代執行の費用について、市町村長は国税と地方税に次ぐ順位の先取特権を持つ(6条2項)。

ガイドラインは、請求の中身を次のように説明しています。

  • 請求できるのは手数料ではなく、実際に代執行に要した費用。
  • 作業員の賃金、請負人への報酬、資材費、第三者に払う補償料は含まれる。
  • 義務違反を確かめるための調査費は含まれない。
  • 徴収できるのは代執行が終わったあとだけで、見積りによる暫定額を先に徴収することは認められない。

代執行令書に書かれる費用は概算の見積額です。請求の額は、終わったあとの実費で決まります。

「国税滞納処分の例」とは、納税の告知、督促、財産の差押え、公売による換価といった手順を指します。ガイドラインの注に、その流れが書かれています。納付を命じられても払わないと、財産を差し押さえられる可能性があるということです。

空き家が借りた土地の上にある場合でも、請求先は同じです。ガイドラインは、空家が除却されても借地権は当然には消滅せず、土地の所有者が自由に使えるようになるわけではないこと、管理の責任は空き家の所有者等にあることを理由に、費用は除却した空家の所有者等に請求すべきだとしています。

自分で解体した場合の費用の内訳は、木造住宅の解体費用の内訳にまとめています。代執行の費用は、市町村が業者に支払った実費がもとになります。

所有者が分からないときの略式代執行

竹林の中に残る空き家
写真: Kuroshio no Neko / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

22条10項は、過失がなくて命令を受けるべき人を確知できない場合の道を定めています。市町村長は、その人の負担で、自ら措置を行うか、第三者に行わせることができます。略式代執行と呼ばれます。

この場合、市町村長はあらかじめ公告をします。公告に書くのは、定めた期限内に所有者が措置を行うべきこと、期限までに行わなければ市町村長または措置実施者が行って費用を徴収することです。

ガイドラインによると、公告は市町村の掲示板への掲示と官報への1回以上の掲載が原則です。相当と認められるときは、官報の代わりに市町村の広報などに載せる方法もあります。公告から2週間を経過した時に、相手方に届いたものとみなされると解されています。

所有者を確知できないと言えるには、十分な調査が前提です。ガイドラインは、登記情報、住民票や戸籍の情報、固定資産課税情報などの調査と、親族や関係者への聞き取りを挙げています。

略式代執行のあとで所有者が判明したときの費用は、22条12項が行政代執行法5条と6条を準用しています。費用の徴収の考え方は、通常の代執行と同じです。ただしガイドラインは、この準用が適用されるのは、改正法の施行後に22条10項の公告を行った場合に限られると注意しています。

通知が届いたときに確かめること

日野市役所の庁舎
写真: 根川孝太郎 (Kotaro Negawa) / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

勧告や命令の書面が届いたら、最初に猶予期限の日付と、書面に書かれた担当窓口を確かめます。空き家の担当は、市区町村の建築や住宅、まちづくりの部署に置かれていることが多く、名称は自治体ごとに違います。

期限までに自分で解体する場合は、次の順番で進めます。

  • 補助金の対象になるか、市区町村の窓口に聞く。補助は契約や着工の前に申請するのが基本で、解体の補助金の記事に5つの市の例があります。
  • 複数の業者から見積りを取る。見積書で確かめる項目と工事前後の届け出は、見積書と届け出の記事に書きました。
  • 業者の許可や登録は、解体業者の選び方で確かめられます。

命令の内容に納得できないときは、書面に書かれた不服申立ての方法と期間を確かめます。期間には限りがあるため、早めに弁護士や自治体の相談窓口に相談します。法テラスのサポートダイヤルは、法的トラブルの相談窓口を案内する窓口です。

家に家財が残っているときは、家財・残置物の片付けの記事も役に立ちます。代執行になると、残された動産は保管や処分の対象になります。自分で片付けられるうちに進めておくと、選択肢が広がります。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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