解体工事で隣の家を傷つけたとき 民法709条・716条と業者の賠償保険、家屋調査、相談先
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解体工事で隣の家を傷つけたとき、賠償する責任を負うのは、まず工事をした業者です。民法709条は、故意または過失で他人の権利を侵害した人が、損害を賠償する責任を負うと定めています。
工事を頼んだ人(注文者)は、民法716条により、原則として業者が第三者に加えた損害の責任を負いません。ただし、注文や指図に過失があったときは別です。工事の前にできるのは、業者の保険を確かめることと、隣の家の状態を記録しておくことです。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士や消費生活センターなどの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
賠償するのは誰か 民法709条と716条

条文の言い方を整理すると、次のようになります。
- 709条: 故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した人は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
- 716条: 注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文または指図について注文者に過失があったときは、この限りでない。
- 715条: ある事業のために他人を使う人は、使われている人が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、選任と監督について相当の注意をしたときなどは除く。
解体工事に当てはめると、重機が隣の塀に当たった、外壁にひびが入った、といった損害は、まず業者が責任を問われる場面です。715条は、従業員が事業の執行で第三者に与えた損害について、使用者の責任を定めています。
注文者である施主が責任を問われるのは、716条のただし書にあたる場合です。条文は「注文又は指図について過失があったとき」としています。たとえば、施主が工事の方法や手順を細かく指示した場合などが、争いの出やすい場面です。実際に過失があったと認められるかは、事情ごとに判断されます。
隣の家の持ち主から、まず施主に苦情が来ることもあります。そのときは、責任の所在をその場で決めつけず、業者に連絡して対応を確かめます。損害賠償の請求権には、時効があります。民法724条は、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で消滅すると定めています。
騒音や振動、粉じんへの苦情は、損害の賠償とは別に、規制や近隣へのあいさつの問題です。騒音・振動の規制と近隣へのあいさつの記事にまとめています。
業者の請負業者賠償責任保険を確かめる

隣家への損害に備える保険として、業者が入る請負業者賠償責任保険があります。東京海上日動のページは、工事や作業が原因で他人の物を壊したり、法律上の損害賠償責任を負ったりした場合の損害を補償する保険だと説明しています。事故の例として、クレーンが倒れて駐車中の車を壊したことなどが挙げられています。
同じページには、補償されない主な場合も書かれています。
- 騒音、ちりやほこりによる損害。
- 土地の掘削や地下・基礎の工事に伴う沈下や振動などによる、土地や建物の損壊。
- 仕事の終了や引渡しのあとに、その結果から生じた事故。
- アスベスト(石綿)による損害、汚染物質の排出や流出。
このページに「解体」という記載はありません。解体工事が対象に入るかは、約款で確かめるよう案内されています。支払限度額や免責金額(自己負担額)も契約ごとに設定されます。保険商品は会社ごとに違うため、これは一社の例です。
契約前に業者へ確かめる項目は、次のとおりです。
- 賠償責任保険に入っているか。加入の証明(保険証券の写しなど)を見せてもらえるか。
- 解体工事が、補償の対象工事に含まれているか。
- 他人の物を壊した場合の支払限度額と、免責金額はいくらか。
- 保険の期間に、工事の期間が入っているか。
- 事故が起きたとき、誰が保険会社に連絡し、誰が隣家と話すのか。
契約書にも、近隣などの第三者に損害を与えたときの扱いが書かれているかを見ます。見積書や契約書の確かめ方は、契約トラブルとクーリング・オフの記事と見積書と届け出の記事にあります。保険に入っていない業者や、証明を出さない業者は、選ぶ前に再考する材料になります。許可や登録の確かめ方は解体業者の選び方に書きました。
工事前に隣の家の状態を記録する

損傷が工事のせいか、もともとあったものかは、工事の前の状態が分からないと争いになります。工事前に家屋の状態を調べて記録する方法が、家屋調査です。
民間の解体工事で家屋調査を義務づける全国共通の決まりは、この調査では確かめられませんでした。参考になるのは、公共工事で使われている仕様書です。大阪市の「沿道家屋等の事前調査仕様書」は、事前調査を、工事の施工計画の決定と損害が発生した場合の判定の基礎となる重要な調査と位置づけています。調査の内容は次のとおりです。
- 写真撮影、傾斜の測定、水平度の測定、沈下の測定。
- 調査の前に、相手方へ日時を通知し、文書で承諾を得る。調査は相手方の立会いのもとで行う。
- 写真には、撮影年月日、所有者名、家屋番号、撮影箇所の状況を書いた黒板を入れる。ひび割れは幅と長さも書く。
- 調査の結果は、事前調査表などにまとめ、所有者または使用者の確認印をもらうことを基本とする。
これは公共工事の仕様書で、民間の工事にそのまま当てはまるものではありません。ただし、何を記録すると後の判断に役立つかの例になります。
民間の工事では、業者や調査を行う会社に頼む方法のほか、施主と業者が隣の家の持ち主の了解を得て、写真で記録する方法があります。写真に日付が残る形で、外壁、塀、基礎まわり、既存のひび割れを撮ります。隣の家に入る場合は、持ち主の承諾が必要です。民法209条も、住家には居住者の承諾がなければ立ち入れないとしています。
調査の費用を誰が負担するかは、契約や話し合いで決まります。見積りの段階で、業者に家屋調査の有無と費用を聞きます。
損傷が見つかったときの動き

工事中や工事後に、隣の家に傷が見つかったときの動きを、順番に並べます。
- 状況を記録する。傷の場所、大きさ、見つかった日時を写真で残す。工事前の記録と見比べる。
- 業者に連絡する。電話だけでなく、メールや書面でも日付の残る形で連絡する。
- 業者が加入している保険の連絡先を確かめる。保険会社への連絡の時期や方法は、保険の約款や案内で確かめます。
- 補修の範囲、方法、費用の負担を、隣の家の持ち主と業者で話し合う。決まった内容は書面にする。
- 業者が原因を認めない、補修に応じないときは、第三者の相談窓口を使う。
施主が間に入るときは、補修の話し合いに自分が出ても、費用を自分が負担すると言い切らないようにします。716条のとおり、原則として賠償の責任は業者にあるためです。ただし、自分の指図が関わっていないかは、振り返っておきます。
相談先

業者との話し合いが進まないときの相談先を、公式の案内で確かめた範囲でまとめます。
- 消費者ホットライン188: 国民生活センターの案内によると、消費生活全般の苦情や問合せを受ける窓口で、消費生活センターなどにつながります。施主と解体業者の間の契約や工事の問題は、消費生活の相談にあたると考えられます。隣の家の持ち主と施主との賠償の話が対象になるかは、電話で確かめます。
- 住まいるダイヤル(公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター): 03-3556-5147。建築士が電話で相談を受けます。受付は平日10時から17時で、1回30分ほどが目安です。住宅に関する相談で、事業者との話し合いも例に挙がっています。解体工事や近隣の損害が対象になるかは、問い合わせて確かめます。
- 法テラス・サポートダイヤル: 0570-078374。法的トラブルの相談窓口の案内を受けられます。受付は平日9時から21時、土曜9時から17時です。
弁護士の相談を検討する場合、費用の補助や無料相談の条件は、法テラスなどの案内で確かめてください。この記事では、条件は確認できていません。
これから業者を選ぶ段階なら、見積りを複数取り、保険の加入や近隣への対応を聞くところから始められます。家財の片付けが残っているときは、家財・残置物の片付けの記事も参考になります。
出典
- 民法(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 209条、709条、715条、716条、724条
- 東京海上日動火災保険「請負業者賠償責任保険」 https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/baiseki/ukeoi/
- 大阪市「沿道家屋等の事前調査仕様書」(公共工事用) https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/cmsfiles/contents/0000115/115405/211-32-01.pdf
- 国民生活センター(消費者ホットライン188) https://www.kokusen.go.jp/map/index.html
- 住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル 電話相談) https://www.chord.or.jp/consult_tel/index.html
- 法テラス https://www.houterasu.or.jp/
いずれも2026年11月4日に確認しました。