共有名義・相続人が複数いる家を解体するときの同意 民法251条と、所在不明の共有者がいる場合
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共有名義の家や、相続人が複数いる家を解体するときは、共有者や相続人の同意が欠かせません。民法251条1項は、各共有者は他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができないと定めています。法務省の資料も、相続で複数の相続人が不動産を共有した状態では、処分に相続人全員の同意が必要だと説明しています。
2023年4月施行の改正で、共有者の中に所在が分からない人がいる場合の道が加わりました。裁判所の裁判を経れば、その人以外の共有者の同意で、共有物に変更を加えられます(民法251条2項)。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士や司法書士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
民法251条 共有物の変更は他の共有者の同意が要る
共有とは、ひとつの物を複数の人が持分を持って所有する状態です。共有物への関わり方は、民法の条文で3つに分けられています。

表は左右に動かして読めます。
| 行為 | 決め方 | 条文 |
|---|---|---|
| 変更(形状または効用の著しい変更を伴うもの) | 他の共有者全員の同意 | 251条1項 |
| 管理(変更を除く) | 持分の価格の過半数 | 252条1項 |
| 保存行為 | 各共有者が単独でできる | 252条5項 |
251条1項のかっこ書きは、形状または効用の著しい変更を伴わないものを変更から除いています。法務省の資料によれば、改正前は軽微な変更でも全員の同意が必要と扱わざるを得ませんでした。改正で、軽微な変更は持分の過半数で決められるようになっています。
建物を取り壊す行為が、このどれにあたるかは、条文にも法務省の資料にも書かれていません。確かめられなかったため、断定はしません。取り壊すと元に戻せないので、共有者や相続人の全員に事前に話し、書面の同意を得ておくのが無難です。弁護士や司法書士に、自分の場合の扱いを聞いてください。
所在が分からない共有者がいるとき
共有者の連絡先が分からず、同意を取れないことがあります。2023年4月1日施行の改正民法は、この場合のために、裁判所を使う方法を定めました。

共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき(所在等不明共有者)に使える手続きは、主に3つです。
- 変更の裁判(251条2項): 裁判所は、共有者の請求により、所在等不明共有者以外の共有者の同意を得て、共有物に変更を加えることができる旨の裁判ができる。
- 持分の取得(262条の2): 裁判所は、共有者の請求により、所在等不明共有者の持分をその共有者に取得させる裁判ができる。取得した共有者は、持分の時価相当額を支払う。
- 持分の譲渡(262条の3): 所在等不明共有者以外の共有者の全員が持分の全部を特定の者に譲渡することを条件に、所在等不明共有者の持分も譲渡する権限を与える裁判ができる。
法務省の資料では、所在等不明とは、登記簿のほかに住民票などの必要な調査を尽くしても、氏名や所在が分からない状態とされています。持分を取得する裁判では、3か月以上の異議の届出期間などが設けられています。解体を急ぐ場面では、時間がかかる手続きです。
法務省の資料によれば、251条2項の変更の裁判は、所在等不明共有者が持分を失うことになる行為(抵当権の設定など)には使えません。建物の解体にこの裁判を使えるかは、事案ごとの判断になります。裁判所の手続きは、専門家に頼んで進めるのが現実的です。
遺産分割の前の家は、相続人全員の共有
相続人が数人いるとき、相続財産はその共有に属します(民法898条1項)。各相続人の持分は、法定相続分などで決まる相続分です(同条2項)。遺産分割が終わるまで、家は相続人全員の共有の状態が続きます。

法務省の資料は、変更・管理のルールが、相続で遺産に属する財産が共有された場合にも適用されると説明しています。相続人の中に所在が分からない人がいるときの扱いには、期間の制限があります。
- 所在等不明共有者の持分が、遺産分割をすべき相続財産に属する場合、相続開始の時から10年を経過していないと、262条の2の持分取得の裁判はできない(同条3項)。
- 262条の3の持分譲渡の裁判にも、同じ10年の制限がある(同条2項)。
251条2項の変更の裁判には、この10年の制限の条文はありません。相続した家の相続人に連絡が取れないときは、どの手続きが使えるかを専門家に確かめます。
相続登記の義務化も、あわせて確認してください。法務省の資料では、相続で不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務とされ、改正は令和6年4月1日施行とされています。
費用の分担と、同意書の段取り
同意を取る段階で、解体費用の分担も決めておきます。民法253条1項は、各共有者は持分に応じて管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負うと定めています。同条2項では、共有者が1年以内にこの義務を果たさないとき、他の共有者は相当の償金を支払ってその持分を取得できます。

解体費用がこの「管理の費用」にあたるかは、条文だけでは分かりません。誰がいくら出すかを、解体の前に書面で決めておけば、あとの争いを避けられます。
書面にまとめておきたい内容は、次のとおりです。
- 建物を取り壊すことへの、共有者や相続人全員の同意。
- 解体費用の総額と、それぞれの負担額。
- 契約をする人(業者と契約する名義人)と、支払いをする人。
- 解体後の土地をどうするか(売る、持ち続ける、分ける)。
補助金にも、所有者全員の同意を求める制度があります。広島市の老朽危険空家等除却補助のページには、所有者が複数いる場合は他の所有者全員の除却工事の同意が必要と書かれています。ほかの市の扱いは、補助金の記事から各市のページで確かめてください。
解体後には、建物の滅失登記が必要です。不動産登記法57条は、表題部所有者または所有権の登記名義人に、滅失の日から1か月以内の申請を求めています。手順は建物滅失登記の記事にあります。解体費用の支払いに困るときは払えないときの記事、売るときの税金は解体費用と税金の記事を読んでください。
出典
- e-Gov法令検索(民法 251条・252条・253条・262条の2・262条の3・898条) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 法務省(民法等の一部を改正する法律・相続土地国庫帰属法の概要) https://www.moj.go.jp/content/001444017.pdf
- e-Gov法令検索(不動産登記法 57条) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 広島市(老朽危険空家等除却補助・2026年9月2日更新) https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/sumai/1003056/1018457.html
いずれも2026年11月4日に確認しました。